先日、魔法のトラップを公開し、改めて彼の凄さを実感した筆者。
今後、天才・小野伸二ほどの最高傑作は、日本で現れることはないだろう、と。
日本サッカー界の最高傑作である天才・小野伸二
これまで天才と言われる選手は数多くいた。しかし、筆者が思う最高の天才は小野伸二、彼以外は考えられない。
筆者が日本サッカー界の最高傑作と思って疑わない天才・小野伸二だが、そのサッカー人生は華やかなものとは程遠い。怪我が彼を苦しめた。
天才には2種類の人間が存在する
一般的に、サッカーにおける天才と言われる人たちを大まかに分けると2種類のパターンになる。
1つは、生まれ持った身体能力を駆使したフィジカル型の天才。
もう1つは、空間認識能力や想像力、的確な判断能力、柔らかなボールタッチなどの才能に長けた、センス型天才。
生まれ持った身体能力の高さを生かすフィジカル型天才パターン
まず、サッカーをしたことがない人など、初心者でも「アイツはスゴい、天才だわ」と目に見えて分かるのが、生まれ持った身体能力を生かすフィジカル型天才。
パワー・スピード・走力・体格・ジャンプ・身体操作能力など、サッカーに限らず、アスリートに必要な能力がズバ抜けており、他競技スポーツでも世界TOPクラスの活躍をしたであろう可能性が高い。
例を挙げれば、海外ではクリスティアーノ・ロナウド(筋肉ムキムキ系男子)やサディオ・マネ(スピードスター)、ディディエ・ドログバ(身体能力の塊)やロメル・ルカク(ドログバ2世)など。
日本人だと、中田英寿(彼はセンス、技術ともに抜群に良い)、本田圭佑(努力の人)、久保竜彦(野生)など。
日本人は一般的に海外選手よりも身体能力が劣る(骨格や筋肉など)ので、海外で活躍する選手は非常に稀で、中田英寿や本田圭佑が活躍できたのは身体能力以外でのところで勝負していた(例えば、2人とも語学は堪能、エゴが強く、徹底していた)のではないかと、筆者は思うわけです。
空間認識や想像力などの才能に長けたセンス型天才パターン
「そこでこのパス?」
「強いパスに対してのトラップの向き、強さ、身体の使い方が抜群」
「そんな遠くで全速力で走ってる味方にドンピシャのロングパス出せるなんてありえない」
想像力、状況認知能力、空間認識能力、動体視力やパスセンス、テクニックなど、サッカーをするためだけに生まれてきたような類稀なセンスを持つ選手もいる。センスの塊のような天才だ。
このセンスの塊である天才パターン。今日の主役である、小野伸二はまさにこのパターン。
世界では、リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスなど、バルセロナのカンテラ出身の選手が多い一方、ルカ・モドリッチやトニ・クロースなどもいる。
ここで気になった人もいると思うが、リーガでプレーしている選手が多い。
「センスの塊ってリーガ・エスパニョーラにしかいないの?」「他のリーグにもいるでしょう?」
確かにいるが、なぜか自然とその特徴を持った人はリーガに集まりやすく、反対に身体能力抜群のフィジカル型天才は、プレミアリーグやブンデスリーガなどに集まりやすい。これは各国のリーグ特性に影響を受けているもので、このリーグ特性に関しては、時間があるときにでも解説していきたい。
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話が逸れてしまったが、日本人選手はどうだろうか。
遠藤保仁や中村憲剛、香川真司や久保建英なんかが挙げられるが、なかでも、今回の主役である小野伸二は日本人でも、いや、世界クラスでみても、ズバ抜けてセンスが良い。
センスの塊であり、日本の最高傑作である小野伸二
さて、やっと主役の話をできるのだが。とは言っても、この天才のスゴさを言葉で言い表せるほど簡単ではない。もしかしたら、これは筆者の語彙力の問題なのかもしれないが。
柔らかなパスとトラップ、普通では想像もつかないようなプレーはジュニア、ユース時代から既に大器の片鱗を見せていた。その頃から各アンダー世代に召集(13歳でU-16日本代表に飛び級招集)され、同世代のトッププレイヤーからも一目置かれる存在に。まさに”稀代の天才”だ。
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天才を襲った”左膝靭帯断裂”という大ケガ
「どんなに上手くても、怪我をしたら意味がない。本当に上手い選手は怪我をしない選手なんだ。」
これは筆者自身が、小学生からずっと言われ続けていたことだが、いま考えると少し違う気がする。
「どんなに上手い人でも怪我はする。本当に上手い選手は、その怪我とどう向き合い、どのように上手く付き合っていくかを知っている選手」
世界トップレベルであろうが、中学生の部活であろうが、どんな人にでも怪我はつきもの。
世界トップレベルの選手は、怪我をしても、その怪我と上手く付き合うことが非常に上手である。
これは、スポーツ医療やトレーニング科学、スポーツ栄養学の進歩が非常に大きな寄与を果たしている。
天才・小野伸二でも怪我はする。ただ、この怪我は相手DFによる悪質なタックルであり、防げるものではなかった。故に、いくら転び方が上手だとしても(小野伸二は相手から執拗にマークを受けることが多くあるので、ファールのもらい方とファールの受け方は超一品であり、怪我をしないような転び方も熟知していたはず)、これに関しては防ぎようがなかった。
左膝靭帯断裂の大ケガから復帰した彼は、以前の天才ではなかった。
プレー自体は確かに柔らかく、天才・小野伸二なのだが、以前とは違う。
Numberの記事でラモス瑠偉はこんなことを言っていた。
「日本で天才がいるとしたら、僕は1人だけだと思う。小野伸二。もし怪我してなかったら、化け物みたいな選手になっていたよ」
「あの怪我で全てを失った。シドニーもそうだし、足の感覚だけでなく、サッカーのイメージ全体が消えてしまった。練習でも試合でもやれていた感覚がなくなっていて、迷いながらプレーするようになってしまった」と小野伸二。
天才であり、高い技術と想像力を売りにしていた小野伸二にとって、あの怪我は非常に大きかった。
しかし、そこは世界トップレベルの天才。その身体でできる最善のことを尽くし、彼はオランダへと渡った。
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フェイエノールト歴代ベストイレブンに選出
フェイエノールトに渡った小野伸二の活躍は、スーパースターたちの言葉から分かるので、筆者からの説明は不要だろう。
「小野は天才。オランダ代表の練習で小野より上手い選手はいなかった。」
ロビン・ファン・ペルシー(元オランダ代表)
「セードルフを見た時より、小野に会った時の方が衝撃を受けた。」
ディルク・カイト(元オランダ代表)
「今の日本代表に第2の小野伸二はいない。シンジは今まで一緒に働いた中で、1番良いプレーヤーだった。」
ベルト・ファン・マルワイク(元フェイエノールト監督・元オランダ代表監督)
特に、ベルト・ファン・マルワイクの言葉は非常に興味深く、フェイエノールト監督であった当時、小野伸二をチームの中心とし、UEFAカップ優勝を果たした名将。
また、オランダ紙「De Gelderlander」が「史上最高のフェイエノールト」として、フェイエノールト歴代ベストイレブンを選出。4-3-3の攻撃的なMFに小野伸二を配置。
4バックには元オランダ代表でキャプテンを務めていたジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト、3トップの一角には先ほどコメントを残していたロビン・ファン・ペルシー、ベンチにディルク・カイトが控えるなど、豪華メンバー。
「たくさんの選択肢があるが、私のフットボール魂は、世紀の変わり目直後(2001年)のシンジ・オノと彼のベルベットタッチによって息づき始めた。ストライカーの頭に合わせてフリーキックを送る技術、ボールを収めて左右両足でシュートする能力とも素晴らしい。小野がいるところには安心感があった」
マーテン・ウィジュフェルス(フットボールライター)