現代サッカーに必要不可欠なビルドアップ、説明できますか?
ペップ・グアルディオラは、バルセロナの監督であった当時、ポゼッションサッカーを築き上げ、その潮流は、世界のサッカートレンドをも変えてしまった。
ビルドアップとは、ポゼッションサッカーを行う上で要となるもので、ビルドアップ無しにポゼッションサッカーは存在しないだろう。
今日、現代サッカーにおいても、ビルドアップの重要性は非常に高く、知ってて出来て当たり前くらいの感覚でいる人は多いはず。
さて、そこで「ビルドアップを説明して」と言われて、あなたは説明できるだろうか?
知っているようで、意外と知らない、ビルドアップとは。サッカーにおける「ビルドアップ」を簡単に解説していきます。
ゴールを奪うことが目的
「サッカーの最大の目的は?」
日本サッカー協会C級ライセンスを受講すると、まず聞かれるのがこの質問。
意外と曖昧で、はっきりと答えられない質問。
「サッカーの最大の目的は、相手チームよりも多くの得点を奪い、勝利すること」
つまり、ゴールを奪うことがサッカーの最大の目的であり、ボール支配率を高めることが目的ではない。
00年代-10年代くらいの日本代表のサッカーは、ボール支配率を目的としているかのようなサッカーをしていた記憶が…。
ビルドアップとは、ゴールを奪う手段の1つ
ゴールを奪うことがサッカーの目的であり、ボール支配率を高めることが目的ではない。ではビルドアップはなに??
「ビルドアップとは、ゴールを奪うための手段の1つ」
ゴールを奪う手段は様々ある。
かつて、国見高校や鹿児島実業が得意としていた堅守速攻と前線へのロングボールからの圧倒的な走力を武器にしたサッカー。いわゆる高校サッカースタイルと言われたもの。多くの人が知っている、いわゆる、サッカー=蹴って走るスタイル、というもの。
他にもあげればキリが無いですが。
ショートカウンター、ロングカウンター、敵陣ポゼッション、ショートパス、セットプレー、中央突破、サイド攻撃。
その中でも、ビルドアップは、ポゼッションサッカーを行う上で要となるもので、ビルドアップ無くしてポゼッションサッカー無し、というくらい重要なもの。
「Build Up」=「構築する」。つまり、攻撃を構築するのです。
ビルドアップとは、どの位置でのこと?
では、ビルドアップってどこからするの?ビルドアップってどこの位置のこと?
ビルドアップとは、自陣後方から前方、すなわちハーフラインまで、主にパスを活用してボールを運んでいくこと。
ただ、ビルドアップはあくまでゴールを奪うための手段なので、自陣後方でボールを回し、ボール支配率を高めることが目的ではないし、それはビルドアップではない。
自陣後方からパスでボールを繋ぎ、相手の綻びを見つけて、ボールを運ぶ。これがビルドアップ。
ボールを正確に「止めて」「蹴る」と、的確なポジショニング
自陣後方からボールを運ぶ、つまり、ビルドアップを行う上で、ボールを正確に”止めて”、正確なところにボールを”蹴る”ことが非常に重要になってくる。
なぜなら、自陣でのパスをミスしたりすると、それはたちまち失点のリスクを招く。浮いたボールを蹴ってしまう、または、それを正確にトラップできない。
相手はそのミスを狙っている。相手からしてみれば、敵陣で、なおかつ、ゴールに近い位置でボールを奪えた方が、ゴールを奪う確率が上がる。
では、ポゼッションではなく、リアクションサッカー=堅守速攻ロングボールカウンターサッカーが良いのでは??と。
どちらも優れており、ハマればどちらも最強。完全に好みの問題であり、どちらが上とか下とか、そういうものではない。
こと、ビルドアップにおいては、ボールを正確に止めて、正確に蹴ることが非常に重要である。
また、的確なポジショニングもビルドアップにおいては非常に重要。
特に、DFラインのポジショニングはビルドアップの命運を左右する。
3バックの場合、GKを含めた4人がダイヤモンドを作ること。
4バックの場合、2CBがPA幅くらいまで幅を取り、GKとDMFでダイヤモンドを作り、2SBは高い位置を取る。
距離感が近すぎると相手のプレッシャーを受けやすくなるので、幅をしっかりと確保。キーマンはGKとDMF。
各ポジションの役割
ビルドアップにおける、各ポジションの役割は異なる。
特に、GKとDF、DMFはビルドアップにおけるキーマンとなりプレーヤーで、戦術理解や高い技術を必要とされる。
GK
ビルドアップにおけるスタートはGKから。かつてのように、ボールを前方へロングフィードするだけでは現代サッカーにおけるGKの役割は務まらない。
味方からのバックパスを受け、それを味方にパスを繋ぐことはもちろん、GKのミス=即失点のリスクを抱えているので、ミスは許されない。
現代サッカーでは、GK(ゴールキーパー)ではなく、GP(ゴールプレーヤー)と呼ぶチームもある。
今日、GKはゴールを守るだけのポジションではない。非常に重要なポジション。
DF
CBはビルドアップの中心を担う。スタートであるGKからパスを受け、高い位置を取った両サイドバックとDMF(ボランチ)にパスを供給する。
また、時には、前方へのロングフィードを狙うことも。彼らの役割は多岐に渡り、チームによっては、司令塔を担うようなプレーヤーがCBを勤めることも。
両サイドバックは、相手の状況によって、時に、中央へ入って、パスコースを増やすことも。
共通するのは、DF=守れる、身体が強い、身体が大きい等だけでは、務まらない。正確な足下の技術と判断能力が必要。
MF
フォーメーションによってMFの人数や配置が異なるので、一概には言えないが。ビルドアップにおけるキーマンの1人がDMF。ボランチと言われるポジション。
攻守において、重要な役割を担う彼らだが、こと、ビルドアップにおいても、非常に重要な役割を担う。
プレー視野を約360°確保するのはもちろん、プレッシャーの高い場面で、ボールを失わない高い技術能力と判断能力。それと、少しの閃き。
ゴールを奪う手段としてのビルドアップにおいて、MFはDFからボールをいかにしてFWへ決定的なパスを供給できるか。
状況判断や高い技術能力などが求められる。
FW
ビルドアップは自陣後方からハーフラインまで、ゴールを奪うためにボールを運ぶ手段の1つ。
では、FWはビルドアップに関与せず、前線に張ってるだけでOKだろうか?
答えはNO。
FWが中盤まで落ちてきて、1つ飛ばしの縦パスを受けることが彼らの重要な役割。ボールを落としてMFがサイドに展開。もしくはFW自らが前を向くプレーも。おとりの動きでサイドや中央のスペースを空けて、3人目の動きを誘発させるなど、オプションを生み出すことが彼らの仕事。
FW=得点を取ればOK、の時代は終わり。
ビルドアップは11人全員が、共通理解のもと、連動して、ゴールを奪うことを目指す。
まとめ
ビルドアップとは。かなり浅く解説、説明してみた。突き詰めると、ポジショナルプレーやら、5レーンやら、サイドバックの動き方やら、ボールに食い付かせるやら、奥が深い。
ビルドアップにおいて大事なのは、チーム全体での共通理解。これなくして、ビルドアップの実現は不可能だろう。
ビルドアップとは、サッカーの目的である「ゴールを奪う」ための手段の1つ。